医療法人 福井心臓血圧センター / 福井循環器病院

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病院紹介

急性心筋梗塞

急性心筋梗塞とは

急性心筋梗塞は心臓に血液を送る冠動脈という動脈が動脈硬化を起こして、詰まってしまい心臓の筋肉が血液をもらえなくなってしまうことが原因です。心筋梗塞では心臓の筋肉が死んでしまい心臓の力が落ちてしまいます。狭心症は血管が細くなり少ししか血液をもらえなくなった状態で、心臓の筋肉は死ぬことはなく血液が流れ出せばまた力が戻ってきます。
心臓に血液を送る冠動脈に動脈硬化が起こると、血管の壁にコレステロールが溜まりブヨブヨのもろい部分ができます。このもろい部分の表面に亀裂が入ると、血液が固まって血管が詰まってしまいます。これが急性心筋梗塞の発症です。血管が詰まって血液をもらえなくなると30〜60分で心臓の筋肉が死に始め、約24時間でその部分のほぼ全ての筋肉が死んでしまいます。筋肉が死に切ってしまう前に血管を再開通させる(再灌流)と死にかけていた筋肉を助け、心臓の機能を保護することができます。
心筋梗塞の治療には発症ごく早期(6〜12時間以内が有効)に再度血液を流して心筋が死ぬのを少しでも防ぐ治療(急性期再灌流療法)と、心筋梗塞とともに起こってくる合併症を防ぐ治療が必要です。また、動脈硬化は常に進行していくものなので、一度心筋梗塞になった人は再びならないように予防する治療も必要です。

急性心筋梗塞の治療法〜急性期再灌流法〜

血栓溶解療法
急性心筋梗塞では最終的に血栓(血の塊)で冠動脈が詰まってしまいます。従って、再度血液を流すには固まった血液(血栓)を溶かせばいいことになります。これが血栓溶解療法です。血栓溶解療法には血栓を溶かす薬(血栓溶解剤)を注射で体に入れる方法、血栓を溶かす薬をカテーテルを使って直接冠動脈に入れる方法があります。
血栓溶解剤(ウロキナーゼ、t-PAなどがあります)を注射で入れる方法は特別な技術がいらず、すぐにできるので早く血管を再開通させることができる利点があります。ただし、血栓が解けない場合や詰まっていた部分が極めて細い状態で残ってしまうことがあるため、投与後に心臓カテーテル検査を行って冠動脈の状態を確認することも行われています。
経皮的冠動脈形成術
手首の付け根(他に肘、太ももの付け根からもできる)から細い管を動脈の中に入れ、動脈の中を心臓まで進めます。心臓の入り口にから出ている冠動脈の根元に管を進め、造影剤を流して冠動脈の状態を調べます(心臓カテーテル検査、冠動脈造影)。血管が詰まっている(または細い)部分がわかったら、管の中から先端に風船の付いたさらに細い管を冠動脈の中まで入れ、詰まっている(細い)部分で風船をふくらませて、血栓と動脈硬化を押しつぶします。これが経皮的冠動脈形成術です。
麻酔は手首の付け根の局所麻酔だけです。動脈の内側は神経がないため、管(カテーテル)を進めても特に何も感じません。
経皮的冠動脈形成術は血栓溶解療法より確実に冠動脈を再開通させることができ、また細い部分を残さないため再び詰まったり、後で狭心症が残ったりすることもありません。しかし、血栓溶解剤を注射するより再開通には時間がかかるので、栓溶解剤の注射に引き続いて行われることもあります。
経皮的冠動脈形成術の成功率は緊急で行っても通常90%以上です。

〜合併症を防ぐ治療法〜

心筋梗塞の合併症
急性心筋梗塞の急性期には急に心臓の筋肉が死んでしまうことによる合併症が起こります。この中には直接死につながる恐ろしいものも含まれています。この合併症の主なものは以下の通りです。
【うっ血性心不全】心筋梗塞になることで心臓の筋肉が一部傷害され、心機能が低下します。このため心臓の働きが不十分になった状態がうっ血性心不全です。
【不整脈(心室性、徐脈性など)】心筋梗塞になると心筋が傷害されるため心室頻拍、心室細動といった不整脈が出現することがあります。また一部の心筋梗塞では、心筋梗塞自体によって心臓のリズムを決めている刺激伝導系という場所が傷害されて、洞不全症候群、房室ブロックといった脈が遅くなるタイプの不整脈が出ることもあります。
【心破裂】心臓の筋肉が傷害され、壊死に陥るとしばらくの間その部分がもろくなります。この時期に過度に血圧がかかると心臓の筋肉が破れてしまうことがあります。これが心破裂です。
うっ血性心不全の治療
【予防】急性心筋梗塞では早期に再度血液を流す再灌流療法により傷害される心筋を少なくすることが最もよい予防策となります。またある程度の心筋が傷害されると周囲の心筋にも傷害が広がることがあり、リモデリングと呼ばれています。急性期に心臓に過度の負担をかけないように安静にしたり(心臓リハビリテーション)、ACE阻害剤・アンギオテンシン受容体遮断剤(ARB)などを使うことで、リモデリングを抑制することでうっ血性心不全の出現が予防できます。
【治療】うっ血性心不全では心臓の働きが落ちて、心臓に入れなくなった血液が肺にあふれ出てしまいます。これを治すためには、心臓に過度の血液が返ってこないように利尿剤によって血液の量を減らす、亜硝酸剤、ACE阻害剤・ARBを投与して血管を拡張させるなどがあります。また急性期のみですが心臓の働きを高めるために強心剤の点滴を行うことがあります。極端に心臓の働きが悪い場合は、心臓の働きを機械的に補う、大動脈内バルーンポンピング(IABP)や経皮的人工心肺(PCPS)を使う場合もあります。
不整脈の治療
【心室頻拍、心室細動】これらの不整脈は一旦起こってしまうと心臓が止まっているのと同じことなので、電気的除細動(電気ショック)を行う必要があります。現在はICU・CCUなどで厳重な監視下に急性期の治療をするため致死的になることは減りました。
【洞不全症候群・房室ブロック】通常冠動脈が再開通すれば改善することが多く、急性期は再灌流による治療が優先されます。再灌流までの間は一時的心臓ペーシングを行います。